この記事を読むとわかること
・文系でも数Ⅲをやるべき理由4つ
・文系入試数学でも役に立つ数Ⅲの知識3つと対応する入試問題など
文系でも数Ⅲを学ぶべき?
文系も数Ⅲを学んだ方が得!
「文系でも数Ⅲってやった方がいいんですか?」という質問をしてくる受験生は非常に多いです。
結論から言って、文系でも数Ⅲをやっておいた方が入試を有利に進めることができます。どうして数Ⅲを学んだ方がいいのでしょうか?
その理由からまずは説明していきたいと思います。
文系でも数Ⅲを学んだ方がいい理由
数Ⅲを学んだ方がいい理由は以下の4つです。
文系でも数Ⅲを学んだ方がいい理由4つ!
1.検算のツールになる
2.誤った方針でも解き切れることがある
3.発想力が足りなくても解けることがある
4.記述が簡単になることがある
検算のツールになる
数Ⅲの知識があると答えが合っていそうかどうかを簡単に確認できることがあります。検算をしてもし間違った答えだとわかったら答案を書き直すきっかけになるので嬉しいですよね。
計算力を高めるのではなく「検算力」を高めることによって、大きな失点を防ぐことができます。
誤った方針でも解き切れることがある
上手い方針で解けば文系の知識の範囲内で解けるにも関わらず、誤った方針で解いていくと文系数学の範囲内では解けなくなってしまうことが稀にあります。
このときに数Ⅲの知識を持っているとそのままの方針で解き進められる場合があるんです。
一度書いてしまった記述を消さずにそのまま解き進められるというのは、大幅な試験時間のロスを防げるという点で重要ですね。
発想力が足りなくても解けることがある
数学ではしばしば発想力を必要とする問題がありますが、数Ⅲの知識を持っていると発想力なしに単調な作業で問題を解けることがあります。
発想力を必要とする問題は全く手がでなくて白紙に近い答案を作ってしまいがちですが、そういったときに時間はかかるけど問題を解き切れるスキルを持っておくと安心ですよね。
記述が簡単になることがある
文系数学の範囲で記述をすると記述が冗長になってしまうことがありますが、数Ⅲを知っていると記述が簡単になることがあります。
これは記述スペースの節約にも、解答時間の節約にも繋がるので嬉しいですよね。
文系も覚えておくべき数Ⅲの知識3つと対応する入試問題
では、具体的に文系の人が覚えておくべき数Ⅲの知識とは何なんでしょうか?それは以下の3つです。
文系も覚えておくべき数Ⅲの知識3つ!
1.極限
2.様々な関数の微分
3.複素数平面の回転
これらについて詳細に解説し、実際にこれらの知識が役に立つ入試問題を紹介したいと思います!
極限
極限というのは、「ある数が限りなく特定の値に近づくこと」を指します。例えば、x1において、x=0を代入することはできませんが、限りなく0に近い正の値を代入することはできますよね。このとき、x1は限りなく正で大きな値を取ることになりますが、この様子を、
limx→+0x1=∞
と書きます。(+0は0の正の側から近づけることを指しています。)
xを限りなく大きくする場合はx1は限りなく0に近づくので、これは、
limx→∞x1=0
と書きます。このようにして、極限的な状態を考えることを数Ⅲの分野ではしばしば行います。そもそも数Ⅱの範囲で出てくる微分は極限によって定義されているものですよね。
f′(a)=limx→ax−af(x)−f(a)
と定義されているのでした。
極限の知識が役に立つのは主に確率漸化式の分野です。例えば以下の問題を考えましょう。

これは理系での出題ですが、文系で出されても全くおかしくない非常に簡単な確率漸化式の問題です。これを解くと、
41{1−(−31)n−1}
と答えが求まるんですが、これが正しいかどうかを極限を使って確かめましょう。
n→∞のときを考えると、最初の状態がどうだったかに関わらず、どの面も等しい確率で平面に接していることが直感的にわかりますよね。よって、n→∞のときの極限が41になっていればよさそうですが、実際、
limn→∞41{1−(−31)n−1}=41
となるので、求めた答えは正しそうです。
この問題の他、確率漸化式全般について解説した記事はこちら↓
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様々な関数の微分
数Ⅱでは微分によって最大値・最小値を議論することを習いますが、微分できる式は多項式に限定されており、無理関数や三角関数、分数関数などは微分することができません。
そこで、数Ⅲで習う様々な微分のしかたを覚えておくと、最大値・最小値や変域を求める様々な問題で役に立ちます。
覚えておくべき微分公式は以下の5つです。
文系が数Ⅲ微分で覚えておくべき公式5つ!
(xα)′=αxα−1(αは実数)
{g(x)f(x)}′={g(x)}2f′(x)g(x)−g′(x)f(x) (商の微分)
{g(f(x))}′=f′(x)g′(f(x)) (合成関数の微分)
(sinx)′=cosx
(cosx)′=−sinx
このあたりの微分公式を押さえておけば問題ないでしょう。
数Ⅲ微分が有効な例として、変数設定のしかたが上手くなかった場合でも解き切れる場合があります。例えば以下の問題を考えてみましょう。

まずは、立体図形の基本である「対称面で切断する」ということを行います。今回はz軸を含む平面で切ればよいので、zx平面で切断してみます。切断すると以下の図のようになりますね。

上図のようにθとおけば、母線の長さや半径、円錐の高さなどが簡単に計算できます。表面積や体積は最終的にsinθだけの関数になり、t=sinθなど適切な置き換えをすることによって最小値を求めることができます。
さて、ここで、角度ではなく長さを変数にとってしまった場合はどうなるでしょうか?例えば円錐の底面の半径をx(>1)とおいてしまった場合を考えましょう。このとき、三平方の定理や三角形の相似を用いれば円錐の高さはx2−1xと求まるので、円錐の体積をV(x)とおけば、
V(x)=3π⋅x2−1x3
となります。文系の範囲ではこの関数の最小値を求めることはできないですよね。そこで、数Ⅲの微分を使うことになります。まず、商の微分公式から、f(x)=x3,g(x)=x2−1とおけば、
V′(x)=3π⋅x2−13x2x2−1−(x2−1)′x3
となります。(x2−1)′の部分については、{(x2−1)21}′となっていることから、合成関数の微分公式より、
2x⋅21⋅(x2−1)−21=x2−1x
となるので、
V′(x)==3π⋅x2−13x2x2−1−x2−1x43π⋅(x2−1)23x2(2x2−3)
と計算できます。(もちろんこの部分は理系の受験生であれば1行で済ませる計算です。今回は文系受験生向けに細かく書いています。)
よって、x>1の範囲においてはx=23のときにV′(x)=0となるので、増減表は以下のようになります。
xV′(x)V(x)(1)⋯−↘23023π⋯+↗
したがって、体積の最小値は23πだと分かります。
このように、不適切な変数設定をしてしまった場合でも数Ⅲ微分を知っていれば解き切れる場合があるのが分かったと思います。
他の例として、最大値・最小値を相加相乗平均の大小関係を用いて求めるのが思いつかなかった場合、微分してしまえば必ず答えが出ます。これは、上で説明した「発想力がなくても解ける場合がある」という項目に対応しています。
例えば、以下の問題を考えてみましょう。

相加相乗平均の大小関係が使えそうかな?と思って試してみても、x2+x1≧xでは定数で評価できていないのでダメです。実はx1=2x1+2x1と変形することによって最小値を求めることができます。
以下、相加相乗平均の大小関係を用いた解答例です。
x>0であるから、相加相乗平均の大小関係より、
x2+2x1+2x1≧33x2⋅2x1⋅2x1=343
等号成立条件は
x2=2x1=2x1かつx>0⇔x=321
のとき。したがって、求める最小値は、
343(x=321のとき)
文系数学の場合、このように相加相乗平均の大小関係を上手く用いて最大値や最小値を求める場面がよく出てきます。
しかし、このような上手い変形が思いつかなかった場合にも微分を知っていれば、必ず最小値を求められますよね。
(x1)′=(x−1)′=−x−2であることを考えて答案を書くと以下のようになります。
f(x)=x2+x1とすると、
f′(x)=2x−x21=x22x3−1
よって、x>0における増減表は以下のようになる。
xf′(x)f(x)(0)⋯−↘3210343⋯+↗
したがって、求める最小値は、
343(x=321のとき)
このように数Ⅲの微分を知っていれば、計算の工夫をすることなく、微分して増減表を描くという非常に単調な作業で最大値・最小値を求められる場合があることが分かったと思います。
また、最大値・最小値だけでなく、値域を求める必要がある場合でも同様に微分は有効です。x=0であるときのx+x1の値域を求めたいとき、文系範囲であれば、
k=x+x1
とおいてから分母を払って出てくる2次方程式が実数解を持つ条件を考えることによってk≦−2,2≦kを得ます。これは逆像法的に値域を求めるというやや発展的な考え方であり、あまり理解していない受験生が多いように思います。
もし数Ⅲの微分を知っていれば、微分して増減表を描くだけで値域が簡単に求まりますよね。
以上見てきたように、数Ⅲの微分は文系範囲でもかなり役立つ知識です。ぜひ覚えておきましょう!
複素数平面の回転
文系数学の範囲内の知識では、回転に関する記述をするのが難しく、ベクトルなどを用いても説明が冗長になりがちです。そこで、xy平面を複素数平面に対応させてから、回転に対応する複素数をかけて、xy平面に戻すという作業をすると非常に簡単に記述ができます。
そもそも複素数平面というのは、複素数a+biを(x,y)=(a,b)という座標の点と見る考え方で、x軸方向を実軸、y軸方向を虚軸と呼びます。実軸はRealの先頭2文字を取って"Re"、虚軸はImaginaryの先頭2文字を取って"Im"と軸に書きます。
例えば2+3iを複素数平面上にプロットすると以下のようになります。

複素数平面上である点を原点中心にθだけ反時計回りに回転させるのは、実はcosθ+isinθをかけるという非常に簡単な作業でできます。
試しに2+3iを原点中心に反時計回りに3πだけ回転させた点を考えてみましょう。
=(2+3i)(cos3π+isin3π)1−233+(23+3)i
となります。これもプロットすると以下のようになり、たしかに3πだけ回転した点を求められたことがわかると思います。

これを応用すれば、xy平面上の(a,b)という点を原点中心にθだけ回転させたいときには、
=(a+bi)(cosθ+isinθ)acosθ−bsinθ+(bcosθ+asinθ)i
を計算してあげれば、(acosθ−bsinθ,bcosθ+asinθ)が求めたい点になるので、非常に簡単に回転の計算、記述をすることができます。
さて、どうしてこれで回転の計算ができるのでしょうか?
2+3iは原点からの距離が13の点なので、0<α<2πを満たす実数αのうちcosα=132,sinα=133を満たすものを考えると、
2+3i=13(cosα+isinα)
と表せるので、下図のような点だと捉え直すことができます。

これにcosθ+isinθをかけると、
=13(cosα+isinα)(cosθ+isinθ)13{cosαcosθ−sinαsinθ+(sinαcosθ+cosαsinθ)}
となりますね。ここで、加法定理を思い出すと、
cosαcosθ−sinαsinθ=cos(α+θ)
sinαcosθ+cosαsinθ=sin(α+θ)
となるので、結局13{cos(α+θ)+isin(α+θ)}となり、これはまさしく2+3iを原点中心にθだけ回転させた点ですよね。図は以下のようになります。

このようにして、回転に関する記述は複素数平面を使うことによって飛躍的に簡単になります。
まとめ
・文系も数Ⅲをやるべき!
・極限、微分、複素数平面の回転の3つが覚えておくべき数Ⅲの知識
・文系が数Ⅲをやるべきなのは
1.極限が確率漸化式などの検算に使える
2.変数設定をミスしても微分で解ききれることがある
3.相加相乗平均の利用が思いつかなくても微分でどうにかなる
4.複素数平面で回転の記述が簡単になる
などが理由