(a+√b)^n+(a-√b)^nの重要な性質の証明と入試問題への応用を解説

(a+√b)^n+(a-√b)^nの重要な性質の証明と入試問題への応用を解説

この記事を読むとわかること

・$(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n$について成立する重要な性質とその証明

・$(a+\sqrt{b})^n$の整数部分の求め方

・$(a+\sqrt{b})^n,\,(a-\sqrt{b})^n$の形が出てくる入試問題とその解説

(a+√b)^n+(a-√b)^nについての重要な性質とは?

(a+√b)^n+(a-√b)^nは常に偶数になる!

この記事ではまず、以下の命題が成立することを示します。

$a,\,b$を整数、$n$を自然数とするときに、$(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n$は常に偶数となる。

具体例で考えてみましょう。

$a=2,\,b=3$とすると、

\[(2+\sqrt{3})^1+(2-\sqrt{3})^1=4\]

\[(2+\sqrt{3})^2+(2-\sqrt{3})^2=14\]

\[(2+\sqrt{3})^3+(2-\sqrt{3})^3=52\]

となるように、ルートの部分がうまく消えて、偶数になることがわかります。これは2通りの証明のしかたで示すことができます。

(a+√b)^n+(a-√b)^nが常に偶数になることの証明

証明方法は以下の2通りです。

$(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n$が常に偶数になることの証明のしかた2通り

1.数学的帰納法

2.二項定理で展開

数学的帰納法を用いる方が数学的に厳密ですが、入試問題を解くうえでは簡易的に二項定理を用いた手法でもよいと思います。数学的帰納法については以下の記事が詳しいです。

数学的帰納法とは?入試問題付きで全5パターンをわかりやすく解説!

今回示すべき命題は「偶数であること」となっていますが、先ほどの具体例での計算を踏まえると「$p_n,\,q_n$を整数として、$(a+\sqrt{b})^n=p_n+q_n\sqrt{b},\,(a-\sqrt{b})^n=p_n-q_n\sqrt{b}$と表せる」ことが示せるのではないかと容易に想像がつきます

これを示すことができれば、$(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n=2p_n$となり、偶数であることは簡単に言えますよね。よって、この命題を示してから偶数であることを最後に言う流れがスムーズでしょう。

それぞれの証明のしかたを見てみましょう。

証明1(数学的帰納法)

$a,\,b$が整数であるとき、すべての自然数$n$について、$p_n,\,q_n$を整数として

\[\left\{\begin{array}{l}(a+\sqrt{b})^n=p_n+q_n\sqrt{b}\\(a-\sqrt{b})^n=p_n-q_n\sqrt{b}\end{array}\right.\]

と表せることを数学的帰納法によって示す。

(i)$n=1$のとき、

$p_n=a,\,q_n=0$とすればたしかに成り立つ。

(ii)$n=k(kは自然数)$のとき成立すると仮定すると、$n=k+1$のとき、

\[\begin{align*}&(a+\sqrt{b})^{k+1}\\=&(p_k+q_k\sqrt{b})\cdot(a+\sqrt{b})\\=&ap_k+bq_k+(p_k+aq_k)\sqrt{b}\end{align*}\]

\[\begin{align*}&(a-\sqrt{b})^{k+1}\\=&(p_k-q_k\sqrt{b})\cdot(a-\sqrt{b})\\=&ap_k+bq_k-(p_k+aq_k)\sqrt{b}\end{align*}\]

となるので、$p_{k+1}=ap_k+bq_k,\,q_{k+1}=p_k+aq_k$とすれば成り立つ。

以上(i)(ii)より、示された。

したがって、

\[(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n=2p_n\]

となるので、$(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n$が偶数になることが示された。

証明2(二項定理で展開)

二項定理より、

\[\begin{align*}&(a+\sqrt{b})^n\\=&(a^n+_nC_2a^{n-2}b+_nC_4a^{n-4}b^2+\cdots)\\&+(_nC_1a^{n-1}+_nC_3a^{n-3}b+_nC_5a^{n-5}b^2+\cdots)\sqrt{b}\end{align*}\]

\[\begin{align*}&(a-\sqrt{b})^n\\=&(a^n+_nC_2a^{n-2}b+_nC_4a^{n-4}b^2+\cdots)\\&-(_nC_1a^{n-1}+_nC_3a^{n-3}b+_nC_5a^{n-5}b^2+\cdots)\sqrt{b}\end{align*}\]

となるので、$p_n,\,q_n$を整数として、

\[\left\{\begin{array}{l}(a+\sqrt{b})^n=p_n+q_n\sqrt{b}\\(a-\sqrt{b})^n=p_n-q_n\sqrt{b}\end{array}\right.\]

と表すことができる。したがって、

\[(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n=2p_n\]

となるので、$(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n$が偶数になることが示された。

二項定理によって展開して示すやり方では、展開したあとの$\cdots$の部分がやや曖昧な議論になっています。入試問題を解くときには、この証明の部分が軸になっているのか、それともそのあとの議論が軸になっているかで使い分けるとよいでしょう

つまり、「〇〇を証明せよ」という問題であれば数学的帰納法によって厳密な証明が要求されますが、答えを求めるためにこの重要な性質を証明する必要が出てきた、という程度であれば後者の簡易的な証明で問題ないです

(a+√b)^nの整数部分の話題に応用することが多い

入試問題では、上で説明した重要な性質を応用して、$(a+\sqrt{b})^n$の整数部分について問われることが非常に多いです。それは、以下のことが言えるからです。

$0<a-\sqrt{b}<1$であれば、$(a+\sqrt{b})^n$の整数部分は奇数になる!

\[(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n=2p_n\]

となっているので、$0<a-\sqrt{b}<1$のときは$0<(a-\sqrt{b})^n<1$となるので、

\[2p_n-1<(a+\sqrt{b})^n<2p_n\]

がわかります。よって、$(a+\sqrt{b})^n$の整数部分は奇数になることが言えますよね。

これに関連した入試問題はしばしば出題されます。以下、具体的な入試問題を見ていきましょう!

(a+√b)^n,(a-√b)^nの形が出てくる入試問題3選

$(a+\sqrt{b})^n,\,(a-\sqrt{b})^n$の形が出てくる入試問題を3つ取り上げて、それぞれについて解説していきたいと思います!

問題1

解答・解説

上で説明した$0<a-\sqrt{b}<1$であれば、$(a+\sqrt{b})^n$の整数部分は奇数になるという性質を示すだけの問題です。

$(7+\sqrt{38})^n+(7-\sqrt{38})^n$が偶数になることを示してあげてから、$0<(7-\sqrt{38})^n<1$が成り立つことを言えばOKですね。

以下、解答例になります。

二項定理より、

\[\begin{align*}&(7+\sqrt{38})^n\\=&(7^n+_nC_27^{n-2}\cdot 38+_nC_47^{n-4}\cdot 38^2+\cdots)\\&+(_nC_17^{n-1}+_nC_37^{n-3}\cdot 38+_nC_57^{n-5}\cdot 28^2)\sqrt{38}\end{align*}\]
\[\begin{align*}&(7-\sqrt{38})^n\\=&(7^n+_nC_27^{n-2}\cdot 38+_nC_47^{n-4}\cdot 38^2+\cdots)\\&-(_nC_17^{n-1}+_nC_37^{n-3}\cdot 38+_nC_57^{n-5}\cdot 28^2)\sqrt{38}\end{align*}\]

となるので、$p_n,\,q_n$を整数として、

\[\left\{\begin{array}{l}(7+\sqrt{38})^n=p_n+q_n\sqrt{38}\\(7-\sqrt{38})^n=p_n-q_n\sqrt{38}\end{array}\right.\]

と表すことができる。したがって、

\[(7+\sqrt{38})^n+(7-\sqrt{38})^n=2p_n\]

となる。さらに、$\sqrt{36}<7<\sqrt{49}$より$0<7-\sqrt{38}<1$が成り立つので、

\[0<(7-\sqrt{38})^n<1\]

が言える。したがって、

\[2p_n-1<(7+\sqrt{38})^n<2p_n\]

が成り立つので、$(7+\sqrt{38})^n$の整数部分が奇数であることが示された。

問題2

解答・解説

2次方程式を解くと、

\[x=2\pm\sqrt{5}\]

となり、$\alpha$や$\beta$の自然数乗が整数になることがないことも考えると、(2)や(3)では本質的には「整数部分はなにか」と問われていることと変わらないですね。

よって、今回学んだ知識が使えそうです。ただ、注意したいのは、

\[-1<2-\sqrt{5}<0\]

であることから、$n$が偶数であれば、

\[0<(2-\sqrt{5})^n<1\]

が成り立ちますが、$n$が奇数のときは、

\[-1<(2-\sqrt{5})^n<0\]

となることです。よって、$s_n$に$0$より大きく$1$より小さい数を足した数が$\alpha^n$になるので、$\alpha^{2003}$の整数部分の1の位を求めるという問題は、$s_{2003}$の1の位を求めることと等しいと分かります。

$s_n$の1の位については(1)の結果から、$4\rightarrow 8\rightarrow 6\rightarrow 2\rightarrow 4$と周期的に変化していくのではないかと予想がつくので、それを数学的帰納法よって示してあげれば良さそうです。

以下、解答例になります。

(1) 与えられた2次方程式を解くと、

\[x=2\pm\sqrt{5}\]

となるので、$\alpha=2+\sqrt{5},\,\beta=2-\sqrt{5}$だとわかる。よって、

\[\begin{align*}&s_1=\boldsymbol{4}\\&s_2=(2+\sqrt{5})^2+(2-\sqrt{5})^2=\boldsymbol{18}\\&s_3=(2+\sqrt{5})^3+(2-\sqrt{5})^3=\boldsymbol{76}\end{align*}\]

また、$\alpha+\beta=4,\,\alpha\beta=-1$より、

\[\begin{align*}&s_n\\=&\alpha^n+\beta^n\\=&(\alpha+\beta)(\alpha^{n-1}+\beta^{n-1})-\alpha\beta(\alpha^{n-2}+\beta^{n-2})\\=&\boldsymbol{4s_{n-1}+s_{n-2}}\end{align*}\]

 

(2) $-1<2-\sqrt{5}<0$であるから、

\[-1<\beta^3<0\]

が成り立つ。よって、$\beta^3$以下の最大の整数は$\boldsymbol{-1}$

 

(3) (1)より$s_1,\,s_2$はともに整数であり、$n\geqq 3$において$s_n=4s_{n-1}+s_{n-2}$が成り立つので、帰納的に任意の自然数$n$について$s_n$は整数であるとわかる。

また、(2)と同様に、

\[-1<\beta^{2003}<0\]

が成り立つから、

\[s_{2003}<\alpha^{2003}<s_{2003}+1\]

が言える。$s_n$が整数であることより、$\alpha^{2003}$以下の最大の整数は$s_{2003}$である。

 

以下、合同式の法を$10$とする。

「任意の自然数$n$について、$s_{4n-3}\equiv 4,\,s_{4n-2}\equiv 8,\,s_{4n-1}\equiv 6,\,s_{4n}\equiv 2$となる」ことを数学的帰納法によって示す。

(i)$n=1$のとき、

(1)より、$s_1\equiv 4$、$s_2\equiv 8$、$s_3\equiv 6$であり、また、

\[s_4= 4s_3+s_2\equiv 2\]

であるから、たしかに成り立つ。

(ii)$n=k(kは自然数)$のときに成り立つと仮定すると、

\[s_{4k+1}=4s_{4k}+s_{4k-1}\equiv 4\cdot 2+6\equiv 4\]

\[s_{4k+2}=4s_{4k+1}+s_{4k}\equiv 4\cdot 4+2\equiv 8\]

\[s_{4k+3}=4s_{4k+2}+s_{4k+1}\equiv 4\cdot 8+4\equiv 6\]

\[s_{4k+4}=4s_{4k+3}+s_{4k+2}\equiv 4\cdot 6+8\equiv 2\]

となるので、$n=k+1$のときも成り立つ。

以上(i)(ii)より示された。

$2003=4\cdot 501-1$より、$s_{2003}\equiv 6$がわかるので求める1の位は$\boldsymbol{6}$

問題3

解答・解説

上の2問は整数部分を考える問題でしたが、今回は(3)で常に整数であることを示す問題となっています。

数学的帰納法や二項定理で展開することによる証明を紹介しましたが、この場合は(2)が誘導となっているので、(1)(2)の結果を用いた数学的帰納法による証明が最も簡単です。

すでに持っている知識にばかり頼って、大学側が求める解答から逸れないように気をつけましょう。

これは2017年東大理系数学第四問で出題された問題です。詳しい解説はこちら↓

東大理系数学2017の入試問題・解答解説・難易度

まとめ

・$(a+\sqrt{b})^n+(a-\sqrt{b})^n$は常に偶数になる

・数学的帰納法か二項定理で展開することによって示せる

・$(a+\sqrt{b})^n$の整数部分について問う入試問題が多い

・$0<a-\sqrt{b}<1$であれば$(a+\sqrt{b})^n$の整数部分は奇数になる

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