この記事を読むとわかること
・不定方程式とは
・入試問題で出される不定方程式の4パターンが何なのか
・不定方程式のそれぞれのパターンに対応する問題例や解き方
不定方程式とは?
未知数の数が方程式の数より多い方程式のこと
不定方程式とは、方程式の数よりも未知数の数が多いような方程式のことです。つまり、$x,\,y$の2文字があって2つ方程式があればただの連立方程式になりますが、式が1つしかない場合には不定方程式と呼ばれ、解が無数に存在します。そこで、大学入試問題では不定方程式において解を整数解だけに限定して解を求めさせる問題が非常によく出題されます。
不定方程式に関する入試問題には大きく分けて4パターンある
入試問題で出題される不定方程式には大きく分けて、2元1次不定方程式、2元2次不定方程式(因数分解可能)、2元2次不定方程式(因数分解不可能)、3文字以上の分数の不定方程式の4パターンがあります。
不定方程式のパターンにはもちろんもっとたくさんあるんですが、私の経験上、これ以外の不定方程式の問題が出題されているのはほとんど見たことがありません。
それぞれのパターンにおいて解法は決まりきっているので、解き方を覚えてしまえば怖いものはありません!
不定方程式の解き方一覧
不定方程式の4パターンの問題の解き方を一覧で載せておきます。
2元1次不定方程式→整数解を1つ見つける→整数解を代入した式を元の式から辺々引く
2元2次方程式(因数分解可能)→( )( )=整数の形に因数分解する
2元2次方程式(因数分解不可能)→片方の文字の2次方程式と見て候補を有限個に絞る
3文字以上の対称な不定方程式→大小関係を定めて最も小さい文字の候補を絞る
大学入試では、整数問題はひらめきを必要とする難しい問題が多いです。そこで、私はひらめきのパターンに慣れるために、網羅的に整数問題を解いて学習していました。
私が使っていたのは、この「マスターオブ整数」という参考書です!不定方程式についてはもちろん、整数問題について幅広く扱っていて、かなりおすすめできる参考書です。
2元1次不定方程式の解き方
問題1
$5x+7y=1$を満たす整数$x,\,y$をすべて求めよ。
式を満たす整数解を1つ見つける
2元1次不定方程式を解くためにまず必要なのは、与えられた式を満たすような整数解をとりあえず1つ見つけることです!上の例題で言えば、
\[(x,\,y)=(3,\,-2)\]
が解の1つとして見つかりますね。この作業ができれば2元1次不定方程式は解けたも同然です。
ただ、$x,\,y$の係数が大きいときや定数項が大きいときは簡単には解の1つが見つからないです。そこで、係数や定数項が大きい場合にはどのように対処すればいいかを説明します。
係数が大きいときはユークリッドの互除法を用いる
係数が大きい場合にはユークリッドの互除法を用いることになります。与えられた式が
\[115x+366y=1\]
だった場合には、$x,\,y$の係数について以下のようにユークリッドの互除法を実行していきます。
\[\begin{align*}&366=115\times 3+21\\ &115=21\times 5+10\\&21=10\times 2+1\end{align*}\]
これを変形すれば、
\[\begin{align*}&21=366-115\times 3\\ &10=115-21\times 5\\&1=21-10\times 2\end{align*}\]
となります。これらの式を下から順に使っていくと、
\[1=21-10\times 2\]
\[\begin{align*}&1=21-(115-21\times 5)\times 2\\ &1=21\times 11-115\times 2\end{align*}\]
\[\begin{align*}&1=(366-115\times 3)\times 11-115\times 2\\ &1=366\times 11-115\times 35\end{align*}\]
となり、与えられた式を満たす整数解の1つとして
\[(x,\,y)=(-35,\,11)\]
が求まりました。このように、係数が大きいときはユークリッドの互除法を実行してからそれを逆算していくことで解の1つを求めることができます。
定数項が大きいときは1になる整数解を探してから定数倍する
定数項が大きい場合にはユークリッドの互除法を用いることになります。与えられた式が
\[5x+7y=1000\]
だった場合には、
\[5x+7y=1\]
を満たす解を1000倍するだけでいいですよね。つまり、解の1つとして、
\[(x,\,y)=(3000,\,-2000)\]
が見つかります。定数項が大きい場合には定数項が1のときの解を求めて、その定数倍を考えれば解の1つを求めることができます。
整数解を代入した式を元の式から辺々引いて一般解を求める
解の1つが求まったら、その解を代入した式を元の式から辺々引きます。代入した式は、
\[5\cdot 3+7\cdot (-2)=1\]
となるので、これを元の式から辺々引くと、
\[5(x-3)+7(y+2)=0\]
がわかります。どちらか一方を移項してあげて、
\[5(x-3)=-7(y+2)\]
となります。ここで、5と7は互いに素な数なので、整数$k$を用いれば$x-3=7k$と表すことができて、これを代入すると、
\[35k=-7(y+2)\Leftrightarrow y=-5k-2\]
以上から、求める一般解は、
\[\boldsymbol{(x,\,y)=(7k+3,\,-5k-2)(kは整数)}\]
となります。
2元2次不定方程式(因数分解可能)の解き方
問題2
$3x^2+5xy+2y^2+5x+3y-4=0$を満たす整数$x,\,y$をすべて求めよ。
( )( )=整数の形に因数分解する
2元2次不定方程式のほとんどは( )( )=整数の形に因数分解することで、解の候補を有限個に絞ることができて、あとは1つ1つ調べれば解が求まります。普段やっている因数分解というと右辺が0になっていますが、整数問題においてはこのような因数分解のしかたがあることもあるんですね。
問題2において、実際に因数分解をしてみると、
\[(3x+2y-1)(x+y+2)=2\]
となりますね。よって、$3x+2y-1,\,x+y+2$はどちらも$2$の約数だということが分かるので、
\[(3x+2y-1,\,x+y+2)=(\pm 1,\,\pm 2),\,(\pm 2,\,\pm 1)(複号同順)\]
の4パターンが候補になります。それぞれ連立方程式を解くと、
\[\boldsymbol{(x,\,y)=(2,\,-2),\,(8,\,-12),\,(5,\,-6),\,(5,\,-8)}\]
となります。今回はどれも整数のものしか出てきたのでどちらも適していますが、整数にならない解が出てくることも多々あるので注意しましょう。
2元2次不定方程式(因数分解不可能)の解き方
問題3
$x^2+2xy+2y^2-2y-3=0$を満たす整数$x,\,y$をすべて求めよ。
片方の文字の2次方程式と見て判別式≧0を考える
判別式を考えるときには、$x,\,y$のうちどちらか1文字の2次方程式と見て、それが実数解を持つための条件を考えます。例えば、問題3において与えられた数式を$x$についての2次方程式と見ると、
\[x^2+2yx+2y^2-2y-3=0\]
となり、この判別式が$0$以上になることより、
\[y^2-(2y^2-2y-3)\geqq 0\Leftrightarrow -1\leqq y\leqq 3\]
とわかります。$y$が整数という条件も考えれば、$y=-1,\,0,\,1,\,2,\,3$の5つだけが候補になりますね!
因数分解ができない2元2次不定方程式は、片方の文字についての2次方程式と見て、その判別式が$0$以上になるという条件を考えると、もう一方の文字の候補が有限個に絞られる。
逆に、解の候補が有限個に絞られない場合はほぼ必ず因数分解ができるのに見落としてしまっている可能性が非常に高いです。
解の候補が絞られれば、あとは代入して調べていくだけです!$x$が整数であるものを選ぶと、
求める整数解は、
\[\boldsymbol{(x,\,y)=(1,\,-1),\,(-3,\,1),\,(1,\,1),\,(-3,\,3)}\]
となります。有限個に絞る作業を思いつくところだけが大変で、それ以外は代入してコツコツ計算していくだけなので簡単ですね。
そもそも2元2次不定方程式が因数分解ができるのかできないのかの見分け方は「2次の項だけに注目してそれが因数分解できるかどうか」になります。
問題2では、$3x^2+5xy+2y^2$の部分が因数分解可能ですが、問題3では$x^2+2xy+2y^2$が因数分解できません。そのため、前者は因数分解による解法を採用し、後者は判別式を用いることになります。
対称な3文字以上の分数の不定方程式の解き方
問題4
$\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z}=1$を満たす自然数$x,\,y,\,z$の組の数を求めよ。
文字に大小関係を設定する
まず、対称な不定方程式では文字の大小関係を設定します。なぜなら、不等式で候補を有限個に絞っていきたいのに、文字の大小がわからないままだと不便だからです。
今回は、$x\leqq y\leqq z$と定めることにします。
最も小さい文字を上から評価する
次に、$x,\,y,\,z$の中で最も小さくなるように設定された文字を上から評価しにいきます。今回の設定では、$x$が一番小さな文字ですね。
$x\leqq y\leqq z$を用いると、
\[\frac{1}{x}+\frac{1}{y}+\frac{1}{z}\leqq \frac{1}{x}+\frac{1}{x}+\frac{1}{x}=\frac{3}{x}\]
が分かるので、
\[1\leqq\frac{3}{x}\Leftrightarrow x\leqq 3\]
が言えます。$x$が自然数であることも考えると、$x=1,\,2,\,3$の3つだけが候補になりますね!このようにして、$x$の候補を有限個に絞ることができました。
あとは、求めた候補を代入して、全く同じ作業を繰り返していくことで答えが求まります。
$x\leqq y\leqq z$の条件のもと、適する組は、
\[(2,\,3,\,6),\,(2,\,4,\,4),\,(3,\,3,\,3)\]
の3組になります。
$x\leqq y\leqq z$の固定を外すと、求める組の数は、
\[6+3+1=\boldsymbol{10}\]
とわかります。最後に自分で設定した大小関係の設定を外す作業は非常に忘れやすいので気をつけましょう!
まとめ
・不定方程式には2元1次、2元2次(因数分解可能)、2元2次(因数分解不可能)、対称な3文字以上の4パターンがある
・2元1次不定方程式は適する解を見つけて、代入した式を辺々引けばOK
・2元2次不定方程式は2次の部分が因数分解可能なら( )( )=整数の形に因数分解する
・2次の部分が因数分解できなければ片方の文字についての2次方程式の判別式≧0を考える
・対称な3文字以上の方程式は大小関係を定めて候補を有限個にして調べることを繰り返せば解ける