この記事を読むとわかること
・整数問題の解法は大きく分けて3つしかない!
・それぞれの解法がどの場面で役立つか
・入試問題の難問・良問3選
整数問題の解き方は?
大学受験数学の中でも最もひらめきを必要とする整数問題の分野。私も高校生の頃かなり苦戦した記憶があります。
しかし、整数問題の解法はたった3つしかなく、そのどれを使えばいいのか意識するだけで飛躍的に整数問題が解けるようになります!
整数問題の解法3パターン!
1.因数分解
2.合同式
3.範囲の絞り込み
因数分解
整数問題で最もよく用いられる解法は、因数分解を利用したものでしょう。
因数分解による解法は特に素数が出てきた時に有効なことが多いです。
これは、素数$p$は因数分解をすると約数として$\pm1,\,\pm p$しか持たないという非常に強い条件を用いることができるからです。
また、「互いに素」な整数が出てくるときにも、約数の関係をうまく使えるので因数分解を狙うことになるのがほとんどです。
互いに素な整数が出てくる代表例としては有理数が絡む問題でしょう。なぜなら、有理数は$\frac{q}{p}$($q$は整数、$p$は自然数、$p,\,q$は互いに素)とおくことが多いからです。
有理数解に関する有名な定理を証明する際にも因数分解をして互いに素であることを上手く用いて示します。
他にも、2元2次不定方程式を解くときには、因数分解を用いることがほとんどです。
不定方程式についてまとめた記事はこちら。
合同式
「あまり」に注目させる問題では、合同式による解法が有効です。
また、これは受験参考書にはほとんど書かれていませんが、整数の2乗が出てきた時には合同式を考えるとうまくいくことが多いです。
これは、「整数の2乗を4で割ったあまりは0と1の2通りしか存在しない」「整数の2乗を3で割ったあまりは0と1の2通りしか存在しない」などの強い条件を用いることができるからです。これは難関大では頻出の事項なので、絶対に覚えておきましょう。
平方数が出てくるときには4で割ったあまり・3で割ったあまりに注目することが多い!
範囲の絞り込み
最後に、整数問題の解法として大事なものに「範囲を絞り込む」というものがあります。
非常にざっくりしていてつかみどころがないんですが、与えられた不等式を用いて候補を有限個に絞ったり、ある文字の実数条件を考えると他の文字の候補が有限個に絞れたりなどなど、範囲の絞り込み方は色々あります。
有限個に絞る込めたらあとはそれを一個ずつ調べていくことになります。
整数問題は鮮やかに解けるものばかりではなく、このように地道に調べていかなければいけないことも多いです。
因数分解や合同式による解法がうまくいかなければ、「大きすぎると困るもの」などを見つけて、その解の候補が有限になるような不等式を見つけましょう。
先ほどの不定方程式の記事の中でも、実数条件から候補を絞る2元2次不定方程式や、不等式から候補を絞る対称な3文字以上の不定方程式など、範囲を絞る解法をしているものがあるので、そちらも是非見てみてくださいね。
整数問題のおすすめの参考書は?
整数問題をもっと解けるようになるにはどの参考書がよいのでしょうか?
マスターオブ整数がおすすめ!
私は「マスターオブ整数」という参考書をおすすめしています。この一冊で、整数についての簡単な問題から難関大学レベルの問題まで網羅的に学べます。
整数は少しひらめきを要する問題になっていることが多いんですが、たくさんの問題に触れることで徐々にひらめきのパターンに慣れていきます。その練習にマスターオブ整数はうってつけでしょう。
整数に関する入試問題の良問・難問3選
私が選んだ整数問題の入試問題の良問・難問とその解答・解説を3題分載せておきます。上で解説したどの3つのパターンのどれに当てはまるのかを意識しながら解いていってください!
問題1
(1) $3^n=k^3+1$をみたす正の整数の組$(k,\,n)$をすべて求めよ。
(1) $3^n=k^2-40$をみたす正の整数の組$(k,\,n)$をすべて求めよ。
問題1を解く上でのポイント
(1)と(2)で見かけは非常に似たような問題になっていますね。
(1)については、右辺が因数分解できる式になっているので、
\[3^n=(k+1)(k^2-k+1)\]
と因数分解してあげて、$k+1$が$3$のべき乗で表せることを利用してあげればよさそうです。
(2)では、右辺が因数分解できそうでできない式になっています…そこで、因数分解という方針は捨てて、合同式で解けないかなーと疑ってみましょう。
平方数が出てきていることから、合同式の法として$4$を選んでみて、絞り込みを行っていけば良さそうです。
似た見た目の2題で解答の方針が大きく違う点に注意したいですね。
問題1(1)の模範解答
\[k+1=3^l(lは1\leqq l\leqq nをみたす自然数)\]
とおくことができる。$k=3^l-1$を与式に代入して、
\[3^n=3^{3l}-3^{2l+1}+3^{l+1}\]この両辺を$3^{l+1}(>0)$で割って、
\[3^{n-l-1}=3^{2l-1}-3^l+1\Leftrightarrow 3^{n-l-1}-1=3^{2l-1}-3^l\]ここで、$l$は$1\leqq l\leqq n$を満たす自然数より、$3^{2l-1}-3^l$は3の倍数であるから、$3^{n-l-1}-1$も3の倍数であることが分かる。ここで、$n-l-1=n-2,\,n-3,\,\cdots,\,1,\,0,\,-1$であり、$n-l-1=-1$のとき、$3^{n-l-1}-1=-\frac{2}{3}$となり整数でなく、$n-l-1=0$のとき、$3^{n-l-1}-1=0$となり3で割り切れ、$n-l-1\geqq 1$のとき、$3^{n-l-1}-1$は3で割って2余る数になるので、$n-l-1=0\Leftrightarrow n=l+1$が必要。これを代入して、
\[0=3^l(3^{l-1}-1)\]$l$は自然数であるから、
\[3^{l-1}-1\Leftrightarrow l=1\]このとき、$n=2$となる。これを代入して、$k$は自然数なので、
\[9=k^3+1\Leftrightarrow k=2\]よって、たしかに$n,\,k$は自然数となり十分。
以上より、求める組は、
\[\boldsymbol{(k,\,n)=(2,\,2)}\]
問題1(2)の解答・解説
以下、合同式の法を4として考える。
右辺について、$k$が偶数のとき、$k^2-40\equiv 0$、$k$が奇数のとき、$k^2-40\equiv 1$である。
また、左辺について、$3^n\equiv (-1)^n$より、$n$が偶数のとき、$3^n\equiv 1$、$n$が奇数のとき$3^n\equiv -1$となる。
よって、$k$が奇数かつ$n$が偶数であることが必要。
ここで、$n=2m$($m$は自然数)とおくと、
\[3^{2m}=k^2-40\Leftrightarrow (k-3^m)(k+3^m)=40\]
$k,\,m$が自然数であることから、$k-3^m$と$k+3^m$の偶奇が一致し、$k+3^m>0$、$k+3^m>k-3^m$であることを考えると、
\[(k-3^m,\,k+3^m)=(2,\,20),\,(4,\,10)\]
となる。それぞれの場合について、$k,\,m$の値を求めると、
\[(k,\,m)=(11,\,2),\,(7,\,1)\]
となり、どちらも$k$は奇数になっているので十分。
以上より、求める組は、
\[\boldsymbol{(k,\,n)=(11,\,4),\,(7,\,2)}\]
問題2
$x,\,y,\,z,\,w$が正の整数で、$x^2+y^2+z^2=w^2$のとき、$x,\,y,\,z$のうち少なくとも2つは偶数であることを証明せよ。
問題2を解く上でのポイント
この問題では、それぞれの数が「偶数かどうか」に注目しています。これは言い換えれば、「$x,\,y,\,z,\,w$を2で割ったあまりに注目している」ことと同じですよね。よって、合同式によって解けるのではないかと考えるのが妥当です。
さらに、前述の通り、平方数が出てくるときには4で割ったあまりに注目することが多いので、合同式の法として4を選ぶのが適切そうです。
以上のことを踏まえて解答を書いていきます。
問題2の模範解答
以下、合同式の法を4として考える。
ある整数$n$について、$n$が偶数のときは$n^2\equiv 0$、$n$が奇数のときは$n^2\equiv 1$となるので、与式から、
\[x^2+y^2+z^2\equiv 0,\,1\]
がわかる。よって、$x,\,y,\,z$が整数であることも踏まえると、$(x^2,\,y^2,\,z^2)$を4で割ったあまりの組み合わせは、
\[(0,\,0,\,1),\,(0,\,1,\,0),\,(1,\,0,\,0),\,(0,\,0,\,0)\]
の4通りしかありえない。ある整数$n$について、$n^2\equiv 0$であるとき$n$は偶数であるから、$x,\,y,\,z$のうち少なくとも2つは偶数であることが示された。
問題3
不等式
\[\frac{1}{l}+\frac{1}{m}+\frac{1}{n}>\frac{8}{5}\]
をみたす相異なる正の整数$l,\,m,\,n$の組は何通りあるか。
問題3を解く上でのポイント
上でも述べた不定方程式のちょっとした応用バージョンです。対称な分数の形の不定方程式は$l,\,m,\,n$の間に大小関係を定めてから不等式で絞りこんでいくんでしたよね。
今回の問題では方程式ではなく不等式になっているだけでやることはほぼ同じです。候補を有限個に絞る文字をどれにするか、というところで迷ってしまう人が多いですが、「大きくなりすぎると困るものはどれか」と考えると非常にわかりやすいです。
$l<m<n$と大小関係を設定したとすると、大きくなりすぎると困るのは$l$ですよね。($l$が大きくなると$m$も$n$も大きくなって、与式の左辺が小さくなりすぎるため)
よって、$l$を上から評価すればいいということがすぐに分かります。不等式での絞り込みを考える際にはこの考え方を知っておくと有利でしょう。
問題3の模範解答
まず、$l<m<n$のときについて考える。
\[\frac{8}{5}<\frac{1}{l}+\frac{1}{m}+\frac{1}{n}<\frac{1}{l}+\frac{1}{l}+\frac{1}{l}=\frac{3}{l}\]
であるから、
\[\frac{8}{5}<\frac{3}{l}\Leftrightarrow l<\frac{15}{8}\]
$l$が正の整数であることも考えると、これをみたすのは$l=1$のみ。これを代入して、
\[\frac{1}{m}+\frac{1}{n}>\frac{3}{5}\]
$1<m<n$より、
\[\frac{3}{5}<\frac{2}{m}\Leftrightarrow m<\frac{10}{3}\]
であるから、$m$が$1$より大きい整数であることも考えると、これをみたすのは$m=2,\,3$
(i)m=2のとき、これを代入して、
\[\frac{1}{n}>\frac{1}{10}\Leftrightarrow n<10\]
$n$が$2$より大きい整数であることも考えると、これをみたすのは、$n=3,\,4,\,5,\,6,\,7,\,8,\,9$の7通り。
(i)m=3のとき、これを代入して、
\[\frac{1}{n}>\frac{4}{15}\Leftrightarrow n<\frac{15}{4}\]
$n$が$3$より大きい整数であることも考えるとこれを満たす$n$は存在しない。
したがって、$l<m<n$の大小関係のもとでは、$l,\,m,\,n$の組は$7$通りあり、与えられた条件式は$l,\,m,\,n$について対称であるから、これ以外の大小関係でも全く同様であり、求める組の数は、
\[7\times 6=\boldsymbol{42通り}\]
まとめ
・整数問題の解法は1.因数分解2.合同式3.範囲の絞り込みの3つ!
・因数分解は素数が出てくる時に有効
・合同式は整数の2乗が出てきた時に有効
・範囲の絞り込みは実数条件や不等式を考えたり様々